会計・税務

事務所を賃貸にした方が良いか、購入した方が良いか

事業を運営する上で、事務所は経営の根幹をなす重要な要素です。特に、事業の成長や法人化を機に「事務所を賃貸し続けるか、いっそ購入すべきか」という経営判断に直面するケースは少なくありません。

この選択は、日々の利便性だけでなく、企業のキャッシュフローや税負担、さらには長期的な資産形成戦略にまで大きな影響を及ぼします。

本記事では、事務所の「賃貸」と「購入」それぞれについて、税務上のメリットとデメリットを挙げていずれが有利となるのか解説します。短期的な節税効果だけでなく、将来の事業展開まで見据えた最適な選択をするための一助となれば幸いです。

賃貸によるメリット・デメリット

まずは、多くの企業が選択する「賃貸」のケースから見ていきましょう。

賃貸のメリット

賃貸のデメリット

購入によるメリット・デメリット

次に、事務所を自社資産として「購入」するケースを所有形態別に解説します。

法人が購入する場合

法人が自己資金や融資を利用して事業用の不動産を取得する、最も一般的な形態です。

法人が購入するメリット

法人が購入するデメリット

役員個人が購入し、法人に貸す場合

経営者個人が自宅兼事務所などを購入し、その一部または全部を自身の法人に貸し出す形態です。

個人が購入するメリット

個人が購入するデメリット

税務という視点からみた両者のポイント

税務上の大きな違いは「経費計上の方法」です。賃貸の場合、支払った家賃は原則として全額がその年の経費になります。これにより損益計算がシンプルで、節税効果も直ちに表れます。

一方、購入の場合は「減価償却」という形で費用化されます。土地は経費にできませんが、建物部分については耐用年数に応じて毎年少しずつ経費に計上します。

そのため、短期的な節税効果は賃貸より小さく見えます。ただし、個人で自宅兼事務所を購入した場合には、住宅ローン控除という強力な節税策が使えるため、長期的には税負担を軽減できる可能性があります。

いずれを選択するかの判断基準

最終的にどちらを選ぶべきか、以下の3つの視点から総合的に判断しましょう。

判断基準① 企業のライフステージと資金力

  • 創業期、成長期:手元資金を事業に集中させ、柔軟性を確保したい場合は「賃貸」が合理的です。
  • 安定期、成熟期:資金力に余裕があり、長期的な経営基盤を固めたい場合は「法人での購入」が有力な選択肢となります。

判断基準② 事業の将来性と計画

  • 将来的な人員増減や拠点移転の可能性が高い事業モデル:「賃貸」が適しています。
  • 地域に根差した事業で、長期間同じ場所で経営を続ける計画:「購入」のメリットが大きくなります。

判断基準③ 税務・財務戦略

  • 短期的な節税とシンプルな経理処理を優先:「賃貸」。
  • 長期的な節税と資産形成、そして信用力向上を重視:「購入」。
  • 経営者個人のライフプランと資産形成も考慮:「役員個人での購入」も視野に。ただし税務リスクの十分な理解が前提。

まとめ

事務所の賃貸と購入の選択は、単なるコスト比較の問題ではありません。

企業の成長ステージ、将来の事業計画、そして税務・財務戦略が複雑に絡み合う、重要な経営判断です。

賃貸には「柔軟性」と「即時的な節税効果」が、購入には「資産形成」と「長期的安定」という魅力があります。

どちらの選択が自社にとって最適かを見極めるためには、専門的な知識が不可欠です。
本記事を参考にしつつ、最終的な判断を下す前には、必ず税理士や不動産の専門家などへ相談し、自社の状況に合った最良の道を選択してください。

Conduct

植西 祐介
コンダクトグループ(株式会社コンダクト/税理士法人コンダクト/社会保険労務士法人コンダクト) 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士