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役員賞与にも社会保険料はかかる!「役員報酬0円・賞与のみ」で注意したい社保加入のルール

役員賞与にも社会保険料はかかる!「役員報酬0円・賞与のみ」で注意したい社保加入のルール

「毎月の役員報酬を0円にして、年1回だけ役員賞与を支給すれば社会保険料はかからない?」

「役員賞与なら、社会保険料には上限があるから負担を抑えられる?」

役員報酬を決める際、このような疑問を持つ経営者の方もいるのではないでしょうか。

結論からいうと、役員報酬が0円でも、役員賞与のみを支給することで社会保険の加入対象となるケースがあります。

そして特に注意したいのが、「毎月の役員報酬あり+役員賞与」と「役員報酬0円+役員賞与のみ」では、社会保険上の役員賞与の取扱いが同じとは限らないことです。

通常、社会保険の被保険者に年3回以下の賞与を支給した場合は、賞与支払届を提出して標準賞与額に対する社会保険料を納めます。

しかし、「毎月の役員報酬は0円で、役員賞与のみを支給するケース」では、役員賞与を12分割した金額を月々の報酬として取り扱い、標準報酬月額を決定することになります。

この記事では、通常の役員賞与との違いも含めて、役員賞与と社会保険の仕組みを社会保険労務士が整理して解説します。

役員賞与にも社会保険料はかかる?まず通常のルールを確認

社会保険の被保険者である役員へ年3回以下の賞与を支給する場合、原則として健康保険・厚生年金保険の対象です。

支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出します。

まずは一般的な役員賞与の取扱いから整理しましょう。

毎月の役員報酬+役員賞与なら、原則「賞与支払届」

たとえば、

  • 毎月の役員報酬:50万円
  • 12月に役員賞与:300万円

という役員がいるとします。

毎月の50万円については「標準報酬月額」に基づいて健康保険料・厚生年金保険料を計算します。

一方、12月の300万円が社会保険上の賞与に該当する場合には、賞与支払届を提出し、「標準賞与額」をもとに別途社会保険料を計算します。

日本年金機構では、名称を問わず、労働の対償として支給されるもののうち年3回以下支給されるものを原則として賞与としています。

年4回以上支給されるものについては、原則として標準報酬月額の対象です。

整理すると、一般的には次のようになります。

支給方法社会保険上の基本的な取扱い
毎月の役員報酬標準報酬月額の対象
年3回以下の役員賞与標準賞与額の対象・賞与支払届
年4回以上支給する賞与原則、標準報酬月額の対象

役員賞与の社会保険料には上限がある

通常の賞与として扱われる場合、標準賞与額には上限があります。健康保険は年度累計573万円、厚生年金保険は1カ月150万円です。

そのため、毎月の役員報酬を抑えて役員賞与の比率を大きくすることで、社会保険料の負担が小さくなるケースがあります。

特に厚生年金保険は1カ月150万円という上限があるため、高額な役員報酬を受け取る経営者にとっては影響が大きくなります。

ただし、ここで注意したいのが、

「それなら月々の役員報酬を0円にして、全部を賞与にすればいいのでは?」

という考え方です。

実は、役員報酬0円・賞与のみになると、単純にこの賞与の上限を利用できるとは限りません。

「役員報酬0円・賞与のみ」は社会保険上どうなる?

毎月の役員報酬が0円で役員賞与のみを支給する場合、役員賞与の年額を12分割して月々の報酬として取り扱い、標準報酬月額を決定する取扱いになります。

ここが、通常の役員賞与と大きく異なるポイントです。

年300万円の役員賞与なら「300万円÷12」で考える

たとえば、

  • 毎月の役員報酬:0円
  • 年1回の役員賞与:300万円

というケースを考えてみます。

このケースでは、

300万円 ÷ 12カ月 = 25万円

として考えます。

報酬月額25万円の場合、標準報酬月額は26万円となり、この標準報酬月額をもとに毎月の健康保険料・厚生年金保険料を計算します。

つまり、

「賞与を300万円支給した月だけ社会保険料がかかる」わけではなく、年額を12分割した金額をもとに毎月の社会保険料が発生する

という取扱いです。

そのため、役員賞与に設けられている標準賞与額の上限を使って社会保険料を抑えようとしても、毎月の役員報酬を完全に0円にしてしまうと、想定していたような効果を得られない可能性があります。

この場合、賞与支払届は提出しない

このケースについては、役員賞与を標準報酬月額の計算に反映するため、支給時に賞与支払届は提出しません。

なお、この「役員報酬0円・賞与のみ」の特殊なケースについては、日本年金機構の一般向けページでは詳細な取扱いまで明記されていません。

役員賞与の決定方法や支給時期、役員としての勤務実態などによって判断が変わる可能性もあるため、実際にこの報酬設計を採用する場合は、事前に管轄の年金事務所へ確認することをおすすめします。

役員報酬0円でも社会保険に加入する?2026年に判断基準が明確化

役員の社会保険加入は、「役員報酬が月額いくらか」だけで判断するわけではありません。

2026年3月の厚生労働省通知では、経営への経常的な参画と、その対価として経常的な報酬を受けているかを実態から判断することが改めて明確化されました。

「役員」という肩書きだけで加入するわけではない

法人の代表者や役員だからといって、無条件ですべての人が健康保険・厚生年金保険の被保険者になるわけではありません。

厚生労働省が2026年3月18日に示した取扱いでは、役員の被保険者資格について主に、

  1. 法人経営への参画を内容とする経常的な労務を提供しているか
  2. その業務の対価として、法人から経常的に報酬を受けているか

という観点から、個別具体的な実態を踏まえて判断するとされています。

たとえば、役員会に出席して意見を述べる程度で、職員への指揮監督や具体的な経営への参画がほとんどないケースでは、被保険者とならない場合があります。

一方で、日常的に経営判断を行い、従業員への指示や決裁などを行っている常勤役員であれば、経営へ経常的に参画していると考えられる可能性が高くなります。

「月額報酬0円だから社保に入れない」とも一律にはいえない

ここで今回の「役員賞与のみ」の問題につながります。

毎月振り込まれる役員報酬が0円だったとしても、

  • 経常的に会社経営へ参画している
  • その役員としての職務の対価として役員賞与が設定されている

という実態があるのであれば、単純に

「月給0円だから社会保険には加入しない」

とは判断できません。

なお、過去の照会では「役員賞与を実際に支給する月から加入する」という案内を受けていますが、2026年3月の通知では被保険者資格について個別具体的な実態を踏まえて判断することが明確化されています。

そのため現在は、資格取得日も含めて、役員賞与の決定時期・支給条件・実際の経営参画状況を整理したうえで年金事務所へ確認するのが安全です。

役員報酬0円・賞与のみの場合、算定基礎届はどうする?

役員報酬0円・賞与のみのケースでは、算定基礎届についても、役員賞与の年額を12分割した金額を報酬として取り扱います。

たとえば毎年5月に役員賞与を支給しているケースでは、過去の照会で、

  • 4月:前年度の役員賞与÷12
  • 5月:今年度の役員賞与÷12
  • 6月:今年度の役員賞与÷12

という形で算定基礎届へ反映する取扱いが案内されています。

通常の給与計算だけを見ていると、4月・5月・6月はいずれも「役員報酬0円」です。

そのため、

給与データをそのまま算定基礎届へ連携してしまうと、正しい金額で申請ができない可能性があります。

役員賞与のみという特殊な報酬設計を採用している企業では、算定基礎届の作成時にも注意が必要です。

「役員賞与=賞与支払届」と覚えるだけでは手続き漏れが起きる

社会保険手続きは、「賞与を払ったら賞与支払届」という単純なルールだけでは管理できません。役員報酬の支給方法や過去の支給実績まで含めて判断する必要があります。

たとえば、同じ「役員賞与300万円」でも、

報酬設計社会保険上の取扱い
毎月50万円+年1回300万円原則、300万円は賞与として賞与支払届
毎月0円+年1回300万円のみ年金事務所への過去の照会では300万円÷12を報酬として取扱い
「賞与」を年4回以上支給原則、標準報酬月額に含める
役員としての経営参画実態がないそもそも被保険者資格がない場合あり

と、取扱いが変わる可能性があります。

さらに、

  • 算定基礎届
  • 月額変更届
  • 賞与支払届
  • 資格取得届
  • 社会保険料の給与控除

はそれぞれ別々に管理しなければなりません。

役員報酬の変更や賞与の支給は従業員の通常給与ほど頻繁に発生しないからこそ、担当者の記憶だけに頼っていると漏れが起こりやすいポイントです。

定時改定・随時改定・賞与支払届のチェックの仕組み化のポイント

人事労務業務では、「担当者が毎月覚えて確認する」仕組みをできるだけ減らすことが重要です。

社会保険の手続きで怖いのは、計算そのものが難しいことだけではありません。

むしろ実務では、

「この人、今月月額変更じゃなかった?」

「役員賞与を払ったけれど、届出はどうする?」

「標準報酬月額が変わったのに、給与システムの社会保険料を変更していなかった」

といった“気づけなかったこと”によるミス”が発生します。

私自身、人事労務の実務では、

人が毎月データを見比べて対象者を探す作業を、できるだけ仕組みに置き換えること

がとても重要だと考えています。

ただし、今回の「役員報酬0円・賞与のみ」のような特殊ケースまで、システムだけで自動的に正しい結論を出せるわけではありません。

2026年3月の通知でも、役員の社会保険加入については個別の業務実態から判断するとされています。

だからこそ、

システムやAIで「漏れを見つける」→専門家・人事担当者が「最終判断する」

というHuman in the Loopの設計が重要です。

役員賞与と社会保険についてよくある質問

役員賞与にも社会保険料はかかりますか?

原則としてかかります。

社会保険の被保険者である役員へ年3回以下の賞与を支給した場合、通常は標準賞与額の対象となり、賞与支払届を提出します。

ただし、毎月の役員報酬が0円で役員賞与のみを支給するケースについては、年額を12分割して標準報酬月額を決定する取扱いとなっています。

役員報酬0円なら社会保険に加入しなくていいですか?

「月額報酬0円」という一点だけで判断するのは適切ではありません。

2026年3月の厚生労働省通知では、経営への経常的な参画と、その業務の対価として経常的な報酬を受けているかなど、実態から総合的に判断するとされています。

役員報酬0円で年1回300万円の賞与だけの場合、社会保険料はどうなりますか?

300万円÷12=25万円を報酬月額として標準報酬月額を決定します。

報酬月額25万円の場合は標準報酬月額26万円となり、その標準報酬月額をもとに毎月社会保険料を計算します。

役員賞与のみの場合も賞与支払届を出しますか?

「毎月の役員報酬0円・役員賞与のみ」のケースでは、賞与支払届は提出せず、賞与年額を12分割して標準報酬月額へ反映する取扱いでになります。

一般的な年3回以下の役員賞与とは取扱いが異なるため、実際の報酬設計については管轄の年金事務所へ事前に確認すると安心です。

社会保険料だけを見て役員報酬を決めるのは危険

役員報酬・役員賞与の設計は、社会保険料だけでなく、法人税、所得税、会社のキャッシュフロー、役員個人の手取りまで含めて判断すべき経営課題です。

特に、

「厚生年金の賞与上限が150万円だから、役員報酬を賞与に寄せれば社会保険料を減らせる」

という情報だけを見て報酬設計するのは注意が必要です。

今回解説したように、毎月の役員報酬を0円にして賞与だけにすると、年額を12分割して標準報酬月額を決定する取扱いとなるケースがあり、想定していた社会保険料削減効果が得られない可能性があります。

さらに税務上、役員へ所定の時期に確定額を支給する場合には、原則として「事前確定届出給与」のルールも確認する必要があります

。国税庁では、定期同額給与や一定の業績連動給与等に該当しない役員給与について、一定の要件を満たさなければ損金算入できないとしています。

つまり、

「社会保険だけ最適化したら、税務では不利になった」

という設計になっては意味がありません。

役員報酬を決める際は、「社会保険料はいくらか」だけではなく、会社と経営者を合わせたキャッシュアウトが最終的にどうなるのかまで見ることが重要です。

社会保険・算定基礎届などの手続きについてはこちらの記事もご覧ください。

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植西 祐介
コンダクトグループ(株式会社コンダクト/税理士法人コンダクト/社会保険労務士法人コンダクト) 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士