労務

社会保険の加入条件を一時的に下回ると脱退?週20時間・30時間の判断と会社の手続き

社会保険の加入条件を一時的に下回ると脱退?週20時間・30時間の判断と会社の手続き

「閑散期で、社会保険に加入しているパートの勤務時間が週20時間を下回った」
「資格喪失届を出すべきか、加入を継続してよいのか迷う」

実際に働いた時間が一時的に減っただけで、直ちに社会保険の資格を失うわけではありません。
労務担当者は、まず契約上の労働時間が変わったのか、勤務実績だけが減ったのかを確認しましょう。

この記事では、パート・アルバイトなどの労働時間が減った場合について、会社が確認すべき加入基準と必要な手続きを解説します。
この記事内では、社会保険は、勤務先の健康保険・厚生年金保険を指します。

社会保険の加入条件を一時的に下回ったら、まず契約内容を確認

週20時間や4分の3基準の判定は、原則として契約上の所定労働時間・所定労働日数で行います。
勤怠記録だけで資格喪失を決めず、雇用契約書や労働条件通知書と照合してください。

状況 会社の対応
契約は変わらず、一時的に勤務実績が減った その減少だけを理由に資格喪失の手続きはしない
契約上の時間・日数を減らした 変更後も加入条件を満たすか確認する
契約は変わらないが、少ない勤務時間が続いている 契約と実態のずれ、今後の勤務予定を確認する

例えば、週20時間の契約を維持し、閑散期の一部の週だけ実働18時間になった場合は、原則として加入を継続します。
一方、週18時間へ契約を変更し、加入条件を満たさなくなる場合は、資格喪失の手続きが必要です。

契約書の記載だけで判断せず、減少した理由・期間・通常勤務に戻る予定も記録しておきましょう。

従業員50人以下・51人以上で、加入基準はどう違う?

従業員50人以下の企業では原則「4分の3基準」、51人以上の企業では、それに加えて「週20時間以上」などの条件を満たす方も加入対象です。
以下は、2026年9月時点の社会保険の適用事業所についての説明です。

従業員数は、同じ法人の本店・支店を合算する

「50人以下・51人以上」は、原則として同じ法人全体の厚生年金保険の被保険者数で判断します。

本店に30人、支店に25人の対象者がいれば、合計55人で、「51人以上」に該当します。

数えるのは、原則として次の厚生年金保険の加入者です。

  • フルタイムで働く方
  • 通常の労働者の所定労働時間・所定労働日数の両方が4分の3以上の方

週20時間以上などの短時間労働者向けの要件で加入している方は、この人数には含めません。
単純な在籍人数や、社会保険加入者全員の人数ではない点に注意が必要です。

「常時51人以上」は、1年のうち6か月以上、対象人数が51人以上になる見込みがあるかで判断します。
なお、個人事業所は事業所単位で判断します。

従業員50人以下の場合|原則は時間・日数ともに4分の3以上

通常の労働者と比べて、週の所定労働時間と月の所定労働日数が、両方とも4分の3以上なら加入対象です。

通常の労働者が週40時間・月20日の職場なら、次の両方を満たすことが基準になります。

  • 週の所定労働時間が30時間以上
  • 月の所定労働日数が15日以上

「週30時間」は、通常の労働者が週40時間の場合の目安です。
職場の所定労働時間によって基準は変わるため、時間だけでなく日数も確認してください。

なお、50人以下でも、労使合意による任意特定適用事業所などでは、次の短時間労働者向けの要件が適用されます。

従業員51人以上の場合|週20時間以上で加入対象

従業員51人以上の場合、次の条件をすべて満たす方は加入対象です。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 2か月を超えて雇用される見込みがある
  • 学生ではないこと(例外あり)

月額8.8万円以上の賃金要件は2026年10月1日に撤廃されました。週20時間以上という時間要件は残ります。

繁忙期・閑散期で所定労働時間が変わる場合の計算方法

週20時間の判定では、時間の定め方に応じて、周期の平均や通常月の所定労働時間を使います。

所定労働時間の定め方 週の時間の算出方法
短期的・周期的に変動する その周期の週平均
1か月単位で定める 月の所定労働時間÷(52÷12)
特定の月だけ例外的に長い・短い その月を除く通常月の時間で算出
1年単位で定める 年の所定労働時間÷52

月の所定労働時間が88時間なら、週換算は約20.3時間です。
「1か月=4週間」では計算しません。

特定月の例外なのか、周期的な変動なのかを、契約や年間の勤務予定から確認しましょう。

加入継続・資格喪失を判断した後に、会社が行うこと

判断後は、必要な届出、給与計算への反映、従業員への説明を進めます。
加入の判断に使った資料と確認内容は、社内で共有できるよう残してください。

加入を継続する場合|保険料の変更は別に確認する

一時的な勤務実績の減少だけで加入を継続する場合、資格喪失届は不要です。

ただし、給与が減っても、社会保険料がその月から連動して下がるわけではありません。
契約変更などで給与も変わる場合は、標準報酬月額を見直す「月額変更届」の対象になるか確認します。

随時改定には、固定的賃金の変動、原則2等級以上の差、3か月間の支払基礎日数などの要件があります。
給与が減ったことだけを理由に、保険料の控除を止めたり減額したりしないようにしてください。

資格喪失が必要な場合|5日以内に届出を行う

加入条件を満たさなくなり、資格喪失に該当する場合は、事実発生から5日以内に資格喪失届を提出します。

労務担当者は、次の項目を確認しましょう。

  • 資格喪失日と、給与から保険料を控除する最終月
  • 健康保険組合に加入している場合の、組合への手続き
  • 従業員に交付する資格喪失証明書などの書類

従業員には、資格喪失日と、健康保険・年金の切り替えが必要になることを伝えます。
必要書類の準備まで含めて進めましょう。

判断を間違えやすい「2か月」と「一時的」の扱い

「2か月下回ったら脱退」「一時的なら必ず継続」といった一律の判断はできません。
加入時のルールや、別の保険制度の取り扱いと混同しないことが大切です。

2か月連続で週20時間未満なら脱退?

「2か月下回ったら自動的に脱退」というルールではありません。

公的Q&Aにある「連続2か月」は、契約では週20時間未満でも、実働が20時間以上となり、その状態が続く場合の資格取得のルールです。
資格喪失にそのまま逆当てはめしないようにしましょう。

雇用保険の「一時的なら継続」と同じ?

健康保険・厚生年金と雇用保険では、取り扱いが異なります。

雇用保険には、所定労働時間の変更が臨時的・一時的な場合の継続の取り扱いがあります。
この説明を、そのまま健康保険・厚生年金の判断に使わないよう注意してください。

現場のワンポイント|シフト変更前に保険料まで説明する

従業員への説明では、加入が続くかどうかと、保険料への影響をセットで伝えましょう。

「社会保険は継続できます」だけでは、収入が減る従業員の不安は解消しません。
給与が減っても保険料がすぐには下がらない可能性を、シフト変更前に共有することが大切です。

AIは、個人情報を除いた勤怠データから、基準を下回った人を抽出する一次点検に活用できます。
契約内容や例外事情を踏まえた最終判断は、労務担当者や社労士が行いましょう。

まとめ|契約と実態を確認し、届出・給与計算につなげる

一時的に勤務時間が減ったときは、契約内容と勤務実態を照合し、変更後も加入条件を満たすか確認します。

加入を継続する場合は保険料への影響を、資格喪失となる場合は届出と給与計算への反映を確認してください。
判断に迷う場合は、資料をそろえて年金事務所や社労士へ相談しましょう。

加入判断から従業員への説明、給与計算の確認まで整理したい企業さまは、コンダクトへご相談ください。

※2026年10月11日時点の公表情報に基づいています。

参照元

Conduct

植西 祐介
コンダクトグループ(株式会社コンダクト/税理士法人コンダクト/社会保険労務士法人コンダクト) 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士