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106万円の壁撤廃で会社の労務担当者がするべきこと|50人以下・51人以上別に解説

106万円の壁撤廃で会社の労務担当者がするべきこと|50人以下・51人以上別に解説

2026年10月1日、パート・アルバイトなどの社会保険加入要件から「所定内賃金が月額8万8,000円以上」という賃金要件が撤廃されました。

いわゆる「106万円の壁」の撤廃です。

会社の労務担当者がまず行うことは、自社が短時間労働者への社会保険適用の対象か確認し、未加入者の雇用契約と勤務実績を点検することです。

この記事では、従業員50人以下と51人以上に分けて、対象者の確認、シフト制の判定、届出、給与計算までの対応を説明します。

自社に該当する章をご確認ください。

※ここでいう社会保険は、健康保険・厚生年金保険です。

原則として社会保険の適用事業所を対象に説明しています。

個人事業所は、事業所自体の適用の有無も別途確認してください。

最初に確認|「50人以下・51人以上」は全従業員数ではない

企業規模は、原則として適用拡大で加入する短時間労働者を除いた厚生年金保険の被保険者数で判断します。

正社員だけでなく、通常の労働者の4分の3以上働き、厚生年金に加入しているパートなども含まれます。

法人は、同じ法人番号の本社・支店・店舗を合算します。

個人事業所は適用事業所ごとに判定します。

51人以上の基準は、一時点の人数だけでなく、1年のうち6か月以上該当することが見込まれるかで判断します。

例えば、正社員30人と、4分の3基準を満たさないパート30人がいる会社は、合計60人というだけで「51人以上」にはなりません。

人数確認の例 判定のポイント
正社員30人+短時間パート30人 合計60人でも、全員を企業規模の判定人数には数えない
本社30人+支店25人 同じ法人番号なら合算し、55人として継続性を確認

※例の正社員は全員、厚生年金の被保険者である前提です。

自社の区分 優先する対応
50人以下で、任意特定適用事業所などに該当しない 現在の加入漏れの確認と、今後の適用拡大への準備
51人以上の特定適用事業所 未加入者の再判定、資格取得届、給与・勤怠の設定
50人以下でも任意特定適用事業所、または引き続き特定適用事業所に該当 「51人以上」の章で対象者の判定と手続きを確認

一度特定適用事業所になった会社は、人数が50人以下に減っても自動的に対象外にはなりません。

国・地方公共団体の事業所も人数にかかわらず短時間労働者への適用対象です。

【従業員50人以下】労務担当者がするべきこと

1.50人以下でも現在の加入対象者を確認する

50人以下で任意特定適用事業所などに該当しない会社は、今回の賃金要件撤廃だけで「週20時間以上のパート全員」が加入対象になるわけではありません。

ただし、通常の労働者と比べて、週の所定労働時間と月の所定労働日数が両方とも4分の3以上であれば、企業規模にかかわらず原則として加入対象です。

確認する資料は、正社員など通常の労働者の勤務条件、パートの雇用契約書、勤務実績です。

例えば通常の労働者が週40時間・月20日勤務なら、週30時間以上かつ月15日以上が目安です。

パートの契約例 4分の3基準
週30時間・月15日 時間・日数ともに満たす
週30時間・月12日 日数を満たさない
週25時間・月16日 時間を満たさない

後ろの2例も、特定・任意特定適用事業所などでは短時間労働者として加入対象になり得ます。

学生でも4分の3基準を満たせば原則として加入対象になるため、「学生だから未加入」と決めつけないようにしましょう。

任意特定適用事業所や、人数減少後も特定適用事業所である会社は、次の「51人以上」の章と同じ手順で確認してください。

2.今後の適用拡大時期を確認する

50人以下の会社も、今後は段階的に短時間労働者への社会保険適用が拡大されます。

企業規模の判定に用いる人数 適用拡大の開始時期
36~50人 2027年10月
21~35人 2029年10月
11~20人 2032年10月
10人以下 2035年10月

2035年10月には企業規模要件が撤廃されます。

「うちは50人以下だから関係ない」で終わらせず、自社の対応開始時期を管理しましょう。

なお、適用拡大前でも、人数の増加によって現在の51人以上の基準に該当する場合があります。

例えば、判定人数が40人の会社は、2027年10月の適用拡大に備え、週20時間以上のパートを今から確認します。

加入候補者が5人なら、5人分の会社負担保険料を予算に織り込み、本人への説明と届出準備の期限を決めましょう。

3.対象者候補と会社負担額を把握する

準備として、パート・アルバイトの管理表に次の項目を追加します。

管理する項目 確認する資料
所定労働時間・算出根拠 雇用契約書、シフト表
契約期間・更新見込み 契約書、更新履歴
学生区分・課程・休学 本人申告、在学状況
現在の加入状況 給与台帳、本人申告
加入対象見込み・対応期限 上記資料、自社の適用開始時期

週20時間以上働く人を中心に対象者候補を抽出し、給与額に応じた会社負担保険料を試算します。

従業員への説明、人件費予算、採用条件の見直しまで含めて準備すると、施行直前の対応を減らせます。

50人以下の会社の対応チェックリスト

  • 人数の数え方と、特定・任意特定適用事業所の該当状況を確認した
  • 4分の3基準を満たす未加入者がいないか点検した
  • 自社の適用拡大時期を確認した
  • 加入対象者候補と会社負担保険料を把握した
  • 従業員説明と手続き準備の担当者・期限を決めた

【従業員51人以上】労務担当者がするべきこと

1.月8万8,000円未満の人も含め、未加入者を再判定する

賃金要件撤廃後は、4分の3基準を満たさないパート・アルバイトなども、原則として次の条件をすべて満たせば加入対象です。

確認事項 加入対象となる条件
事業所 特定適用事業所、任意特定適用事業所など
所定労働時間 週20時間以上
雇用期間 2か月を超えて使用される見込みがある
学生区分 原則として学生ではない

年収106万円未満、月額8万8,000円未満でも、加入対象となり得ます。

給与額を理由に除外していた人を再確認してください。

契約期間が2か月以内でも、更新などにより2か月を超えて雇用される見込みがあれば、原則として契約当初から加入対象です。

「入社後2か月は加入させない」という運用はできません。

例えば、週22時間・学生ではない人を1か月契約で採用し、当初から契約更新による継続雇用が見込まれる場合は、原則として入社日から加入します。

また、休学中・定時制・通信制などの学生は、短時間労働者の加入対象となる場合があります。

学生証の有無だけでなく、課程や在学状況を確認します。

※最低賃金の減額特例許可を受け、所定内賃金が月額8万8,000円未満の「特定減額特例対象者」は原則として適用対象外ですが、本人の申し出による加入制度があります。

該当者は通常の判定と分けて確認してください。

2.シフト制は「所定労働時間」を週に換算する

社会保険の加入判定は、まず雇用契約書や就業規則などで定めた所定労働時間で行います。

休憩時間を除き、週20時間ちょうども対象として確認します。

シフト制で毎週の勤務時間が異なる場合は、定め方に応じて計算します。

所定労働時間の定め方 週の所定労働時間の計算
毎週一定 契約上の週の時間を確認
2週・4週などの周期で変動 周期内の所定労働時間の合計 ÷ 周期の週数
1か月単位 月の所定労働時間 × 12 ÷ 52
1年単位 年の所定労働時間 ÷ 52

例えば4週間で18・22・18・22時間の勤務を繰り返す契約なら、平均は週20時間となり、時間要件を満たします。

契約上の勤務パターン 週換算の結果
4週間で18・22・18・22時間 80時間÷4週=20時間
月86時間 86時間×12÷52=約19.85時間
月87時間 87時間×12÷52=約20.08時間

上の例は所定労働時間の判定です。

契約は20時間未満でも実績が増えている人は、次の勤務実績の確認も必要です。

週20時間に相当する月の時間は約86時間40分であり、「月87時間」は概算の目安です。

境界に近い場合は端数を丸めず計算してください。

夏季休暇や繁忙期など、特定の月だけ例外的に所定労働時間が短い・長い場合は、その月以外の通常の月を基準に判断する取扱いがあります。

「シフトによる」としか定めていない場合は、勤務日数・時間、繰り返しの周期などを確認し、判定の根拠を明確にします。

契約内容とシフト表が食い違う場合は、実態も点検してください。

3.契約が週20時間未満でも、勤務実績を毎月確認する

契約上は週20時間未満でも、人手不足や恒常的な残業によって実際の労働時間が増えている場合があります。

次の両方を満たす場合は、他の加入条件を満たしていることを前提に、3か月目の初日に資格取得となります。

  • 実際の労働時間が連続する2か月において週20時間以上となった
  • 引き続き同じ状態が続いている、または続くことが見込まれる

例えば契約は週18時間でも、10月・11月の実労働時間が週20時間以上となり、12月以降も同様の勤務が見込まれる場合、資格取得日は12月1日です。

月 勤務状況と会社の対応
10月 実労働時間が週20時間以上となったことを記録
11月 2か月連続の実績を確認し、12月以降の見込みを現場に確認
12月 継続見込みがあれば、12月1日を資格取得日として手続き

一方、10月だけ勤務が増え、11月から週18時間に戻る場合は、この連続2か月の取扱いには当たりません。

契約変更と実績増加は、加入日の考え方を分ける

加入理由の例 資格取得日の考え方
11月15日から契約を週18時間→22時間に変更 他の要件も満たせば11月15日
契約は週18時間のまま、10・11月の実績が週20時間以上で、その後も継続見込み 12月1日

いずれも、他の加入要件を満たすことが前提です。

1週間だけ20時間以上になった場合や、1か月だけ勤務が増えた場合に、直ちにこの取扱いで加入するわけではありません。

一方で、2か月連続の実績を確認したのに「契約は18時間だから」と放置することもできません。

労務担当者は、勤怠締め後に週20時間未満の契約者の勤務実績を抽出し、該当者について翌月以降のシフト予定を現場責任者に確認します。

判定に使用した勤怠記録・シフト表と、継続見込みを確認した記録を保存してください。

なお、雇用契約自体を週20時間以上に変更した場合は、実績を2か月待つ取扱いではありません。

他の要件も満たせば、原則として変更日から加入対象として手続きを進めます。

4.対象者へ説明し、扶養から外れる手続きも案内する

加入要件を満たす場合、通常は本人の希望で加入・未加入を選べません。

加入日が決まる前に、次の内容を本人へ説明します。

説明・案内する項目 会社が準備するもの
加入日・保険料・手取り 加入日の判定結果、給与試算
年金・健康保険の保障 制度の案内資料
配偶者などの扶養から外れる手続き 加入日がわかる情報、連絡先の確認
国民健康保険の脱退 本人が市区町村で手続きする旨の案内

年収130万円未満でも、勤務先での加入が優先される場合があります。

勤務先の加入要件を満たす場合は、自身で社会保険に加入します。

加入日が決まったら、本人から配偶者の勤務先・加入先保険者へ扶養削除の連絡をしてもらうなど、従前の加入状況に応じた手続きを案内します。

5.資格取得届を提出し、給与計算を設定する

新たな加入対象者について、事実発生から5日以内に資格取得届を提出します。

協会けんぽ加入事業所は日本年金機構へ、健康保険組合加入事業所は組合側の届出も確認してください。

実務は、加入日を確定してから、届出・給与設定の順に進めます。

タイミング 会社がすること
対象者の判定時 資格取得日を確定し、判定根拠を保存
届出前 個人番号または基礎年金番号、報酬、被扶養者情報を確認
事実発生から5日以内 資格取得届を提出し、短時間労働者区分を設定
初回の給与計算前 標準報酬月額、本人負担額、控除開始月を登録
初回の給与計算時 決定通知・給与明細と照合
主な書類 提出先・提出主体
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 会社から日本年金機構へ提出
健康保険組合の資格取得届 組合加入の会社は、健康保険の届出を組合へ
健康保険 被扶養者(異動)届など 扶養家族を付ける場合に、加入先の手続きを確認

2026年10月1日時点で、賃金要件撤廃によって新たに加入対象となった人は、原則として10月1日からの加入を確認します。

それ以前から加入すべき人は、別途、本来の資格取得日を確認してください。

会社自体が新たに特定適用事業所に該当した場合は、従業員の資格取得届に加え、事業所側の該当手続きも確認します。

すでに特定適用事業所である会社が、賃金要件撤廃だけを理由に該当届を再提出する必要はありません。

賃金要件は撤廃されましたが、保険料を計算するための報酬額の確認は引き続き必要です。

基本給だけでなく、通勤手当など社会保険上の報酬に含まれる項目を確認し、加入時の報酬月額を算定します。

すでに届出期限を過ぎている場合は、提出日を加入日にせず、本来の資格取得日を確認して速やかに対応してください。

加入漏れが後から判明すると、遡って保険料を支払うことがあります。

6.契約書・社内案内・勤怠管理を更新する

雇用契約書のひな型、採用ページ、扶養内勤務の案内、社内FAQ、給与ソフトの判定条件に「月8万8,000円以上が加入条件」という旧説明が残っていないか確認します。

実際の労働時間が増え続けている人は、現場責任者・本人と勤務条件を確認し、契約内容も実態に合わせて整理します。

加入後に欠勤などで一時的に勤務時間が減った場合も、単月の実績だけで資格喪失とせず、契約・継続的な働き方を確認してください。

51人以上の会社の対応チェックリスト

  • 月8万8,000円未満の人を含め、未加入者を抽出した
  • 週20時間、雇用期間、学生区分を確認した
  • シフト制の所定労働時間を正しく週換算した
  • 週20時間未満の契約者について、連続2か月の実績と継続見込みを確認した
  • 対象者に加入日・保険料・扶養の手続きを説明した
  • 資格取得届を提出し、給与計算を設定した
  • 契約書・社内案内・システムの旧条件を更新した
  • 勤怠締め後に実績を確認する担当者と手順を決めた

106万円の壁撤廃への対応は、加入対象者の確認だけで終わりません。

50人以下の会社は将来の適用拡大を見据えた準備を、51人以上の会社は契約と勤務実績の継続的な点検を進めましょう。

よくある質問

Q1.106万円の壁撤廃で、50人以下の会社もすぐに加入手続きが必要ですか?

企業規模の要件を満たさず、任意特定適用事業所などにも該当しない会社は、今回の撤廃だけで週20時間以上のパート全員が加入対象になるわけではありません。

ただし、4分の3基準に該当する人は原則として加入対象です。

50人以下の会社も2027年10月以降、規模に応じて段階的に適用が拡大されるため、対象者候補の確認を進めてください。

Q2.週20時間ちょうどの契約も加入対象ですか?

はい。

労働時間要件は「週20時間以上」なので、ちょうど20時間も含まれます。

他の加入要件も満たしているか確認し、該当する場合は手続きを進めます。

Q3.シフト制は月87時間になったら必ず加入ですか?

月87時間は、月単位で定めた所定労働時間を週換算するときの概算の目安です。

計算式は「月の所定労働時間×12÷52」です。

契約上の所定時間なのか、一時的な実績増加なのかを分けて確認してください。

Q4.契約は週20時間未満でも、残業が続けば加入対象になりますか?

はい。

実労働時間が連続する2か月において週20時間以上となり、同様の状態が続いているか、続くことが見込まれる場合は、他の要件も満たせば3か月目の初日に資格取得となります。

「契約が20時間未満だから対象外」とせず、勤務実績と今後のシフトを確認してください。

Q5.週20時間以上に契約を変更した場合も、2か月待ってよいですか?

いいえ。

契約変更によって加入要件を満たした場合は、原則として変更日から加入対象です。

連続2か月の取扱いは、契約上は週20時間未満でも、実際の労働時間が恒常的に増えている場合の確認です。

Q6.本人が「扶養内でいたい」と希望したら、加入させなくてもよいですか?

通常の加入要件を満たす場合、本人の希望だけを理由に未加入にすることはできません。

年収130万円未満でも、勤務先の加入要件を満たせば自身で社会保険に加入します。

会社は加入日・保険料・手取りを説明し、扶養から外れる手続きも案内してください。

Q7.契約期間が1か月なら、社会保険に加入しなくてもよいですか?

契約期間だけでは判断できません。

更新などで2か月を超えて雇用される見込みがあれば、原則として契約当初から加入対象です。

更新条項や継続雇用の見込みを確認してください。

Q8.加入漏れが見つかった場合、発見日から加入させればよいですか?

いいえ。

本来の資格取得日を確認して手続きを進めます。

遡って保険料を支払うことがあるため、年金事務所や加入先の健康保険組合に必要な対応を確認し、本人にも説明してください。

この記事のまとめ

106万円の壁撤廃への対応は、自社の適用状況と、従業員の契約・勤務実績の確認から始めましょう。

会社の区分 優先して取り組むこと
50人以下 現在の加入漏れを確認し、今後の適用拡大に向けて対象者と会社負担額を把握する
51人以上 未加入者を再判定し、本人への説明、資格取得届、給与設定を進める

50人以下でも、4分の3基準を満たす人や、任意特定適用事業所などで働く人は、現在も加入対象になり得ます。

50人以下の会社も、2027年10月以降の段階的な適用拡大への準備が必要です。

シフト制は所定労働時間を正しく週換算し、契約が週20時間未満の人も勤務実績を継続して確認してください。

実労働時間が連続する2か月で週20時間以上となり、その後も継続する見込みがある場合は、他の要件も満たせば3か月目の初日に資格取得となります。

一方、契約変更で加入要件を満たした場合は、原則として変更日からの加入です。

まずは未加入者の一覧を作り、確認・説明・届出の担当者と期限を決めるところから進めましょう。

参考資料

Conduct

植西 祐介
コンダクトグループ(株式会社コンダクト/税理士法人コンダクト/社会保険労務士法人コンダクト) 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士